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グランプリシリーズ・カナダ大会女子は本田真凛がフリーで巻き返し5位

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フィギュアスケートの「グランプリシリーズ 2017」のスケート・カナダ・インターナショナルの女子シングル(10月28~29日)では、グランプリシリーズにシニアデビューした16歳の本田真凛選手がショート・プログラムでジャンプミスから本調子が出せず10位発進と出遅れたが、フリー・スケーティングで巻き返して総合178.24点で5位に終わった。

優勝したのは地元カナダの21歳・ケイトリン・オズモンド選手で、ショートは76.06点で1位発進、フリーも1位で総合212.91点をマークし、2位のロシアの17歳のマリア・ソツコワ選手の192.52点に大差をつけた。3位はアメリカの26歳・ベテランのアシュリー・ワグナー選手の183.94点だった。21歳にしてグランプリシリーズ出場の女子シングル選手で最年長となった本郷理華選手は、総合176.34点で6位だった。

本田真凛選手はショートで焦って出遅れたがフリーで巻き返す

今大会でグランプリシリーズにシニアデビューした本田真凛選手は、本田三姉妹の知名度と華のあるルックスで、日本女子シングル選手で最も注目される存在になっている。本人の勝気なコメントに基づくと、本田選手はこの大会前までは、プレッシャーから極度に緊張するという経験はほぼなかったようだ。

本田選手は10月7日のジャパンオープンのフリーで133.41点をマークしたが、18歳の三原舞依選手の147.83に大きく差がついた。平昌五輪の日本女子シングルは2枠しかないため、本田選手は基礎点を増やすべく、急きょプログラムの難度を上げてカナダ大会に臨んだ。

本田選手のショートの曲は、今シーズン初戦で優勝した9月15~16日のUSインターナショナルクラシックの初日ショートでは前年と同じ曲「スマイル」だったが(得点66.90点で1位発進)。しかし、今大会では濱田美栄コーチが運転する車の中で聴いて気に入ったという「The Giving」を初披露した。

しかも、ショートのジャンプの難度を上げた。冒頭のコンビネーション・ジャンプは、USインターナショナルクラシックではトリプルフリップ-トリプルトウループだったが、今回はより難度が高いトリプルルッツ-トリプルトウループに挑戦した。しかし、トリプルトウループで回転不足、しかもまさかの転倒となってしまい、▲2.10点の減点となった。

グランプリシリーズ・シニアデビューで新曲、しかも難度の高いジャンプに初挑戦で、本人も成長して周囲の期待を嫌でも感じるようになると、さすがの本田選手もこれまで経験したことのないプレッシャーや緊張に襲われたのかもしれない。

最初のジャンプのミスで自分のペースを見失ってしまったのか、後半の最初のトリプルループは1.10点の加点がもらえたものの、最後のダブルアクセルは回転が抜けてシングルアクセルになってしまい、規定により1回転はノーバリュー(0点)となってしまった。

同じ関西大学(本田選手は付属高校在学中)の先輩でもある解説者の織田信成氏が、ジャンプのミスの後に本田選手の表情が普段よりも硬く、本来の表現力が発揮できていないと案じていた。結果的に、技術点24.77点と演技構成点28.83点、減点▲1.00点で、ショートはまさかの52.60点にとどまって、10位発進となった。

ちなみに、USインターナショナルクラシックでは技術点36.78点、演技構成点30.12点でショートは66.90点だったから、そこから14点以上も低い点になってしまった。演技後のインタビューでは、本田選手は茫然とした表情で「全然ダメだった」「すごく焦っていた」「申し訳ない」などと語った。正直、公の場であんな憔悴した暗い表情の本田選手を見たのは初めてだった。

しかし、翌日のフリーでは、本田選手はいつもの明るい笑顔で登場した。ちゃんと気持ちを切り替えられたのは、コーチや家族などの的確なアドバイスがあったからなのか、本田選自身も強い人だからなのかは定かではない。いずれにせよ、前日の不振が嘘のように、本田選手は本領を発揮した。

フリーではオペラ「トゥーランドット」の曲をバックに、本田選手は強みの豊かな表現力と軽やかな動きで観客を魅力した。7つのジャンプのうち後半のダブルアクセル-トリプルトウループとトリプルフリップは回転不足で小幅減点となったが、他の5つは加点が付いた。

結果、技術点64.73点、表現力が問われる演技構成点は60.91点で、フリーは125.64点で3位、総合では178.24点で5位に浮上した。USインターナショナルクラシックでマークした総合198.42点(ショート66.90点、フリー131.52点)には及ばなかったが、試合の規模・緊張感・審査員が違うため、単純比較はできない。

演技終了時に笑顔でガッツポーズを見せた本田選手は、その後のインタビューでは「自分が今できることは出せた」とフリー演技を評し、ショートでの落ち込みとフリーでの巻き返しについては「いい経験ができた」と述べた。

不運続きの本郷理華選手はジャンプのミスで得点が伸び悩み

本郷理華選手は昨シーズンは骨座傷で思うような結果が出せず、今期はシーズン入り直前の9月3日付で長久保裕コーチが家族の事情で退任という不運に見舞われた。9月21~23日にスロバキアで開催されたオンドレイネペラ杯のキスアンドクライには、本郷選手の母の本郷裕子コーチが同席していた。今回同行していたのは、成瀬葉里子コーチとみられる。

大柄な本郷選手はダイナミックで伸びのある演技が持ち味だが、ジャンプの回転不足などで得点が伸びなかった。ショートもフリーも冒頭のトリプルフリップ-トリプルトウループの連続ジャンプで回転不足をとられて減点となった。さらに、フリーでは他にも4つのジャンプで回転不足を取られ、トリプルルッツでは回転不足に加えて踏切エッジ違反も取られた。

結果的に、ショートは61.60点で6位、フリーは114.74点でやはり6位、総合では176.34点で6位に終わった。規模やプレッシャーが違う試合だから単純比較はできないが、オンドレイネペラ杯での189.98点(ショート66.49点、フリー123.49)を下回った。演技中には自覚しづらいミスが多かったため、スコアを見て初めて気づいてショックを受けたのか、演技後の本郷選手はインタビューで涙ぐんでいた。

ケイトリン・オズモンド選手が華のある演技で断トツ1位

今大会を制したのは、地元カナダの21歳・ケイトリン・オズモンド選手だった。大歓声の中で華のある優美な演技を見せ、ショートもフリーも断トツ1位だった。

ショートでは3つのジャンプ(トリプルフリップ-トリプルトウループ、トリプルルッツ、ダブルアクセル)の全てに加点が付き、自己ベストを更新する76.06点をマークした(技術点40.12点、演技構成点35.94点)。

フリーでは7つのジャンプのうち冒頭のトリプルフリップ-トリプルトウループと最後のダル部アクセルが減点され、トリプルフリップがダブルフリップになってしまったが、それでも技術点はトップの65.95点、演技構成点では断トツの71.90点を取り、フリーの136.85点は2位のソツコワ選手に10点以上の大差を付けての1位だった。

ロシアのマリア・ソツコワ選手が2位、パゴリラヤ選手はフリーで崩れ9位

総合2位はロシアの17歳の見た目可憐な外見と衣装のマリア・ソツコワ選手だった。ショートは66.10点で3位発進だったが、フリーでは126.42点で2位に浮上し、総合でも192.52点で2位となった。

一方、同じロシアの19歳の先輩・アンナ・パゴリラヤ選手は、ショートでは貫禄さえ感じさせる演技で69.05点をマークし、2位につけていた。

しかし、パゴリラヤ選手はフリーで絶不調に陥った。フリーは優勝したケイトリン・オズモンド選手と同じ曲「ブラックスワン」だった。先に終えたオズモンド選手が高得点で大歓声を浴びている中での演技開始となった。

冒頭のトリプルルッツ-トリプルトウループは回転不足で減点されたが、見た目は次のダブルアクセルまでは持ちこたえていた。しかし、その後の3連続ジャンプで手をついた辺りから乱れ始め、連続ジャンプの予定が単独になったり、回転不足になったりし、最後のジャンプとスピンで転倒するなど、こういう大きな大会の最終組ではあり得ない惨状になっていった。スピンの転倒は腰を強打したようにも見え、痛そうだった。それでも棄権せず、最後まで何とか演技を続けた。

キスアンドクライでフリーの87.84点という悲惨なスコアを、パゴリラヤ選手は暗い表情で見ていた。怪我の影響で不調だったのではないかとの情報もあった。もしかしたら、演技前から痛みか何かの問題を抱えていて、悪い結果をある程度覚悟していたのではないかと思われる表情に見えた。

ベテランのアシュリー・ワグナー選手が意地を見せ3位

26歳で女性スケーターとしてはベテランのアメリカのアシュリー・ワグナー選手は、逞しさと妖艶さの不思議な魅力を持つ選手だ。ショートは61.57点で7位と出遅れたが、フリーでは122.37点で4位に浮上し、総合では183.94点で本田真凛選手を抜いて3位となった。

ショートでは3つのジャンプのうち2つで回転不足を取られて減点され、技術点が28.10点と低調で、ショートが61.57点で7位発進という期待外れの結果となった。フリーでも3つのジャンプで回転不足、最後のトリプルルッツではエッジ違反を取られ、ジャンプのミスが足を引っ張って技術点は54.87点と伸び悩んだが、表現力を問われる演技構成点は1位のオズモンド選手に次ぐ67.50点で、ベテランならではの円熟味・色気と意地・底力を見せた。

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