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フィギュアNHK杯男子は羽生結弦欠場で大波乱、30歳ボロノフ優勝「疲れた」

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フィギュアスケートの「グランプリシリーズ 2017」の日本大会であるNHK杯は、11月10~11日に大阪市中央体育館で開催されたが、男子シングルの日本の選手はオリンピック2連覇を狙う羽生結弦選手(22)が怪我、東日本選手権で勝ち上がった村上大介選手が急性肺炎で欠場し、目玉選手不在となった。

毎回ジャッジが違うとしても、今回の優勝選手の得点の271.12点は、今年のグランプリシリーズのこれまでの4大会で最低だった。一方で、今回は羽生選手がいかに多くの人たちから愛されているかを示すエピソードや、ベテラン選手らの人柄や親日家ぶりがうかがえるエピソードが話題になり、別の意味で興味深い大会だった。

男子シングルで優勝したのはロシアの30歳のセルゲイ・ボロノフで総合271.12点、2位はアメリカの28歳のアダム・リッポンで261.99点、3位はイスラエルの29歳のオレクシイ・ビチェンコで252.07点だった。さすがに、4回転量産の若手のようにはいかないが、日本ではフィギュアスケート選手生命がせいぜい20代半ばまでで短命と思っている人が多いなか、ベテラン勢が表彰台を占めたこと自体は凄かった。どうやったら、日本の多くの選手のように体のあちこちを痛めて引退を余儀なくされることなく、30歳まで世界レベルの現役選手でいられるのだろう。

アメリカのジェイソン・ブラウン選手は4回転を跳ばない戦略をとり、表現力がショート・フリーとも今大会最高を叩き出して総合245.95点で4位だった。日本勢は、村上選手の代わりに出場した友野一希選手(19)が231.93点で7位、佐藤洸彬選手は199.20点で10位に終わった。

羽生選手はまさかの負傷で欠場、今後は全日本に照準

今回出場していたらきっと断トツの優勝でグランプリファイナル行きが即決と誰もが期待していた羽生結弦選手は、前日・9日の公式練習で、まさかの転倒で右足関節外側靭帯損傷という災難に見舞われ、無念の欠場となった。ロシア大会で成功できた大技の4回転ルッツの練習中だった。転倒した痛々しいシーンの映像がテレビで流れたから、悲鳴を上げたファンも多くいただろう。

今回羽生選手のメインのコーチであるブライアン・オーサー氏は胆のう手術明けで来日できず、ジャンプ専門のコーチのジスラン・ブリアン氏が日本に同行していた。

日刊スポーツの2017年11月11日付の記事によると、羽生選手は8日に熱を出して寝込んでいて、病み上がりで臨んだ9日の公式練習で負傷した。また、その夜は病院に行かずホテルで右足首を冷やして回復を待ったが、翌朝には患部を触るだけで痛みがあり、医師の診察を受けるとドクターストップがかかったそうで、ブリアン・コーチは「ユヅルはとても落ち込んで、泣いていた」と明かしたそうだ。

羽生選手本人はグランプリファイナルの5連覇に意欲を持っていたが、それ以上に大事なのは平昌五輪だ。注目される羽生選手の回復見通しについては、11月12日付スポーツ報知の記事によると、日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュア委員長が「全日本までには、と聞いている」と明かした。12月20~24日に東京・武蔵野の森総合スポーツ施設で開催される全日本選手権で優勝すれば、平昌五輪出場が即決する。

日本男子シングルの平昌五輪出場枠は3枠ある。これまでの連盟の基準によれば、1人目は全日本選手権での優勝者で、2人目は全日本の2、3位とグランプリファイナルでの上位2人から選考される。3人目は世界ランキング上位者などから総合的に判断されて選抜される。羽生選手は現在世界ランク1位だ。

当然ながら連盟はメダルが獲れる選手を出場させたいはずだから、羽生選手や宇野昌磨選手のように世界トップクラスの実績のある選手については、怪我などのアクシデントで選考試合が不調でも、“総合的判断”として救済措置をとるだろう、と誰もが期待している。

多くの人たちが羽生選手を大好き

羽生選手の怪我による欠場で、いろんな国の選手たちが、次々と温かいコメントを出し、改めて羽生選手が世界中の多くの人たちから愛されていると分かった。

中でも、今大会で4位となった米国のジェイソン・ブラウン選手は、ショートの演技後のキスアンドクライで、勉強した日本語の平仮名で紙に手書きした「ゆずるさんへ はやくよくなってください! ジェーソン」とのメッセージをカメラに向かって掲げ、感動を呼んだ。また、今大会で出場しなかった選手も含め、大勢の選手たちがSNSで羽生選手の回復を願うコメントを出していた。

また、熱心な“ゆづ”ファンの女性たちはもちろん、羽生選手がフリーの曲「SEIMEI」で演じる陰陽師の安倍晴明をまつっている京都の晴明神社へのお参りに赴いた。この神社は2年前に羽生選手がこの曲をフリーに使用し始めて以来、羽生ファンの聖地となっている。

スポーツ報知の11月12日付の記事によると、羽生選手が負傷した翌日の10日には、平日にもかかわらず、通常より多い約1,500人が訪問し、回復を祈る絵馬を奉納したファンもかなりいたそうだ。

30歳のボロノフ選手の力強い演技に拍手喝采

ボロノフ選手がフリー演技を終えた時、いろんな国から来た観客が立ち上がって拍手喝采したのは、感動的だった。ボロノフ選手は4回転はトウループのみだが、30歳にして高さのある綺麗なジャンプで魅せてくれた。ショートはステップからのトリプルルッツで構えてしまって減点、フリーは4回転トウループで両足着氷で減点されたものの、ショート90.06点、フリー181.06点で、どちらも1位だった。

ボロノフ選手は演技を終えてキスアンドクライに向かう途中で、カメラに向かって日本語で「ありがとう」「疲れた」と話していた。この選手も親日家のようだ。

(メディア報道等加筆で2017年11月12日に更新)

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