フィギュアスケート

平昌五輪フィギュア男子は羽生結弦と宇野昌磨が感動のワン・ツー・フィニッシュ

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平昌五輪のフィギュアスケート男子シングルのフリー・スケーティングが2月17日午前より開催され、日本の羽生結弦選手(23)が317.85点で2連覇の偉業を成し遂げ、宇野昌磨選手(20)が306.90点で銀メダルという、感動の日本勢ワン・ツー・フィニッシュとなった。

羽生選手は、完璧だったショートの後、フリーではジャンプで着氷が乱れてヒヤッとさせる場面も2度あったが、4回転ジャンプ4本のうち3本で高い出来栄え点の加点を得て、美しい表現力でも突出していた。フリーは4回転を6回跳んだアメリカのネイサン・チェン選手(18)に次いで2位だったが、総合では1位だった。

宇野昌磨選手は冒頭の4回転ループで転倒後、しっかり立て直した。解説の本田武史氏が、もしかしたら細かい部分で得点が伸びない可能性に言及し、本人も演技終了直後に「危ねー」と漏らしていたが、蓋を開けてみるとフリーは高得点で3位となり、総合では2位だった。

羽生選手と同じブライアン・オーサー・コーチの門下生のスペインのハビエル・フェルナンデス選手(26)は、4回転ジャンプのミスはあったものの、残りは手堅く仕上げ、抜群の表現力も追い風に、フリーは4位、総合では3位に入って、五輪初のメダルを獲得した。

ソチ五輪後の男子シングルの4回転量産時代の先陣を切った中国の金博洋(ボーヤン・ジン)選手(20)は、フリーでは4回転ジャンプ4本のうち3本を成功させたが、総合4位に終わり、惜しくもメダルを逃した。

グランプリ・ファイナル制覇を含め今季負け知らずだったアメリカのネイサン・チェン選手(18)は、ショートがジャンプの失敗続きでまさかの17位だったが、フリーでは4回転ジャンプを6本も跳ぶ大逆転作戦に打って出た。うち5本を成功させて、フリーは1位となったが、総合では297.35点で5位に終わった。

日本の田中刑事選手(23)は、団体戦で不成功だった4回転サルコウを1本成功させたが、他のジャンプで転倒などのミスが出て伸び悩み、総合で18位に終わった。

なお、NHKの中継は、画面に楽曲が示されなくなり、各選手のフリーの得点発表時に技術点の最後の1桁が見えなくなり、途中で放送時間切れになって総合から2チャンネルに切り替わり、結構ひどかった。それでも、解説が本田武史氏だったのは安心感があって良かった。

羽生結弦はジャンプの多少のミスはあったが総じて大成功で貫禄の2連覇

羽生選手は、ショートに続いて、フリーでも4回転ジャンプは基礎点は低いが完璧にこなせる確率の高いトウループとサルコウで出来栄え点積み増しを狙う戦略に出て、大成功を収める物凄い精神力と技術力を見せつけた。

演技の楽曲は自ら編集するという羽生選手は、緊張をほぐすため曲が始まる直前に自分の呼吸音を録音している。今回も羽生選手の呼吸音がしっかり聞こえてから、楽曲「SEIMEI」(映画「陰陽師」サウンドトラック中の曲)が始まった。

羽生選手は冒頭の4回転サルコウと、続く4回転トウループを綺麗に決めて、いずれも出来栄え点で3.00点の最高の加点を獲得した。その後も、トリプルフリップと後半の4回転サルコウ-トリプルトウループの連続ジャンプで、順調に加点を得た。

その後、4回転トウループで着氷が乱れて連続にできず、重複で基礎点が下がって出来栄えも2.06点の減点になった。それでも、次のトリプルアクセルの連続ジャンプで機転をきかせて3連続にして加点を得て、挽回に成功した。

トリプルループは好調で、最後のトリプルルッツでは着氷が乱れたものの堪えて出来栄え1.10点の減点となった。

表現力が問われる演技構成点ではトップで、フリーの得点は206.17点(技術点109.55点、演技構成点96.62点)で、フリーは4回転量産のネイサン・チェン選手に次いで2位だった。ショートの111.68点と合わせて、総合では317.85点で断トツの1位だった。

羽生選手は演技終了時には悔しそうな表情も少し見せていたものの、何か叫び(本人が後で明かしたところでは「勝った!」と叫び、自分の右足と氷に「ありがとう」と声掛けしたそうだ)、大歓声の中で観客に向かって「ありがとう」と言って、笑顔を見せた。

宇野選手の得点が出て金メダルが確定すると、控室で待機していた羽生選手は涙ぐんで「ありがとうございました」と言った。また、メダルを逃したことが確定して控室を出て行くネイサン・チェン選手の背中を軽く叩いてをねぎらう優しさを見せた。

インタビューでは、羽生選手はサポートしてくれた人たちへの感謝を強調した上で、「自分がやりきれたなと思う演技ができた」「右足が頑張ってくれたなと思いました」「感謝の気持ちだけです」と述べていた。

宇野昌磨選手は最初の大技ジャンプで転倒するもその後立て直す

宇野選手はさほど緊張している様子もなく、冒頭の4回転ループで転倒後、しっかり立て直した。楽曲は「トゥーランドット」。

冒頭の4回転ループで転倒して、出来栄え点が4.00点減点となり、演技後に宇野選手は転倒で笑ってしまった、と振り返っていた。演技前は、完璧な演技ができたら1位になることも可能と計算していたが、いきなりジャンプを失敗したので、自分の演技に集中しようと思い直した、と後で語っていた。

その後はしっかり立て直した。4回転フリップ、トリプルループ、後半のイーグルからのトリプルアクセルでは順調に出来栄え加点を得た。

4回転トウループ-ダブルトウループでは着氷が乱れて出来栄え点が1.54点の減点となったが、その後は4回転トウループをはじめ、順調にこなした。

解説の本田武史氏は、経験者でなければ気付かない細かい減点の可能性がある箇所を幾つか気にしていた。実際、宇野選手は演技終了時には少し残念そうな表情も見せ、リンクから出た際に樋口コーチにハグされて「危ねー」と言っていた。

だが、蓋を開けてみれば、フリーは202.73点の高得点(技術点111.01点、演技構成点92.72点、減点1.00点)で、フリー3位だった。ショートの104.17点と合わせて、総合では 306.90点で2位となった。

ハビエル・フェルナンデス選手は表現力で魅せる

スペインのハビエル・フェルナンデス選手は「氷上のエンターテイナー」と称されることもある豊かな表現力を発揮した。楽曲は「ラ・マンチャの男」。

前半のジャンプは好調で、冒頭の4回転トウループでは出来栄え点で2.14点の加点を得た。ジャンプで唯一の失敗は、後半の4回転サルコウの回転が抜けてダブルサルコウになってしまったことだった。

フェルナンデス選手は羽生選手に迫る高い演技構成点を獲得し、フリーの得点は197.66点(技術点101.52点、、演技構成点96.14)で、フリー4位だった。ショートの107.58点と合わせて、総合では305.24点で3位だった。五輪で初のメダル獲得となった。

中国の金博洋選手は大技4回転に成功

ソチ五輪後の男子シングルの4回転量産時代の先陣を切った中国の金博洋(ボーヤン・ジン)選手は、フリーでは4回転ジャンプ4本のうち高難度のルッツを含む3本を成功させたが、総合4位に終わり、惜しくもメダルを逃した。フリーの楽曲は「組曲 惑星」「映画『スターウォーズ』より」。

冒頭の大技・4回転ルッツでは、出来栄えで1.71点の加点を得た。ジャンプは後半の4回転トウループで転倒して出来栄え点4.00点の減点となった以外は、ノーミスだった。演技終了時にはガッツポーズをしていた。

フリーの得点は194.45点(技術点109.69点、演技構成点85.76点、減点1.00点)で、フリーは5位だった。ショートの103.32点と合わせて、総合では297.77点で4位だった。得点を見た金選手は泣いていた。その時点で暫定1位だったからなのか、思ったほど得点が伸びなかったからなのかは、微妙に見えた。

ネイサン・チェン選手が大逆転の賭けに出る

金メダル候補とみられていたはずのアメリカのネイサン・チェン選手(18)は、ショートではジャンプの失敗続きで、まさかの17位に沈み、フリーは第2グループという屈辱の滑走順だった。しかし、チェン選手は意地を見せ、フリーで4回転ジャンプを6本も跳んで大逆転を図り、5本成功させた。

チェン選手が登場すると観客から大歓声が巻き起こった。楽曲は「映画『小さな村の小さなダンサー』より」「春の祭典」。

チェン選手は冒頭の大技・4回転ルッツを成功させて1.57点の加点を得て、次の4回転フリップ-ダブルトウループも成功させた。

3番目の4回転フリップの単独ジャンプは手を付き、出来栄え点で2.23点の減点となった。これが唯一の減点で、他の要素は全て加点が付く圧巻の演技だった。

後半の4回転ジャンプも、イーグルから4回転トウループ-トリプルトウループ、4回転トウループの単独ジャンプ、4回転サルコウでしっかりと加点を稼ぎ、大歓声の中で演技を終えた。

驚異的な技術点により、フリーの得点は自己ベスト更新の215.08点(技術点127.64点、演技構成点87.44点)で、フリーでは断トツ1位だったが、ショートの82.27点と合わせて総合は297.35点で5位だった。ショートの失敗がなければ、金メダルを狙えたはずだった。

メダルを逃したことが確定して控室を去ろうとするチェン選手を、優勝した羽生選手がねぎらっていた。

田中刑事選手はジャンプのミスで伸び悩み

第1グループで登場した田中選手は、団体戦で跳べなかった4回転サルコウを1本成功できたが、他のジャンプで転倒などのミスが出て伸び悩み、総合で18位だった。楽曲は「フェデリコ・フェリーニ・メドレー」。

冒頭の4回転サルコウは成功して加点を得た。次の4回転サルコウは転倒して連続ジャンプにできず、基礎点が下がり、出来栄え点で4.00点の減点となった。だが、トリプルアクセルでは出来栄えで1.57点の加点を獲得した。

後半の4回転トウループでは着氷が乱れて出来栄えで1.37点減点となり、次のトリプルアクセルでは転倒して連続ジャンプにできず、基礎点が下がって出来栄えも3.00点の減点だった。

団体戦では陽気な曲なのに表情が硬かったが、今回は後で田中選手自身が「表現を意識しました」と述べたように、曲調に合った明るい表情を見せていた。

フリーの得点は団体戦から16点以上上がって164.78点(技術点85.64点、演技構成点81.14点、減点2.00点)で、フリーは15位だった。ショートの80.05点と合わせて、総合では244.83点で18位だった。

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