フィギュアスケート

羽生結弦の記者会見ハイライト-号泣の理由、フェルナンデス、結婚願望は?

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平昌五輪のフィギュアスケート男子シングルの金メダリストかつ五輪金メダル2連覇した羽生結弦選手は、帰国して2月27日の午後に外国特派員協会記者会見と日本記者クラブ記者会見をこなした。

フェルナンデス選手への想いや金メダル確定の瞬間の涙の理由、結婚願望の質問への答えなど、とても興味深い発言も多数あった。

なお、以下の羽生選手の発言は、筆者が読売・日本テレビ系の「情報ライブミヤネ屋」での外国特派員協会での会見映像や読売新聞のサイトで公開された日本記者クラブでの記者会見の映像から拾ったものだ。

ちなみに、羽生選手は日本記者クラブでの会見冒頭で、「元々僕はすごく考えることが好きで、考えることよりも、喋ることが好きなほうが強いんですかね」と話していたように、インタビューの機会を捉えて、フィギュアスケート論も含め、しっかりと自分の意見を発信していた。頭脳明晰でソツのない喋り技術の持ち主で、意地悪な難問や愚問にも神対応だった。

今回の金メダル獲得について

羽生選手のオリンピックの金メダルについての思い入れは、相当なものだったとよく分かった。嘘偽りなく、それが羽生選手のこれまでの人生の目標だった。

羽生選手は金メダルについて語った。「小さい頃からオリンピックで金メダルを取るのが夢でしたし、具体的に二連覇ということは考えてなかったんですけど、この年齢でこの時のオリンピックで金メダルを獲りたい気持ちがずっとあったので、その気持ちにずっと押してもらいながらスケートを頑張ってきたかなと」

「今回日本の音楽を基調とした曲(筆者注:フリーの陰陽師のテーマ曲「SEIMEI」のこと)で金メダルを獲ることができたのは、非常に歴史的なことだと思いますし。また、これから自分の国の音楽であったり、また独特な文化を持つ曲であったり、そういったものが増えていくきっかけになればな、というふうに思っています」

4回転ジャンプの進化について

羽生選手は日本記者クラブの会見で、「この4年間、進化が目まぐるしかった」と述べていた。4回転がどんどん進化していく現状について、羽生選手は2つの会見の両方で、技術と芸術についての自論を展開した。羽生選手は、確かな技術があってこその表現力であり、両方が必要、との立場だ。

羽生選手はこう語った。「芸術というのは明らかに正しい技術、徹底された基礎によって裏付けされた表現力・芸術であって、それが足りないと芸術にはならないと僕は思っています。(中略)僕は難しいジャンプを跳びつつ、それがあるからこそ芸術が成り立っているんだなというようなジャンプをこれからもしていきたいなというふうに思っています」

「これからのフィギュアの未来について話します。もちろん5回転が主流になったりとか、4回転半が今のトリプルアクセルのように主流になるということは、この50年間においてはないだろうと僕は予測します。それが主流になってしまったら、ジャンプ選手権。それこそ、今回平野歩選手とお話をして参考にさせて頂いた部分もあったんですけど、ハーフパイプになってしまう」

「ただ、もし羽生結弦が4回転半もしくは5回転を挑む、試合に絶対に入れると決めた場合は、それは確実に表現の一部にします。それは言えます。それぞれの選手がそういうふうに思えるかどうか分かりませんが、僕のスタイルはそれです。何より、僕がフィギュアスケートをやっている理由はそういうところに惚れ込んだからであって」

「難易度と芸術のバランスっていうのは、僕は本当はないんじゃないかな、と。芸術は絶対的な技術力に基づいたものであると、僕は思っています」

一方、研究熱心な羽生選手は、「フィギュアスケートはまだまだ科学的に研究されているものが少ないですし。また、研究していたとしても、割と個人であったり、僕もその研究している1人かもしれないですけれども、自分のためだけであったり、そういったことがすごく多いので。これから、僕が二連覇したことも含めて、国として、また研究機関として、フィギュアスケートがより研究されることを願っています」との希望も述べた。

4回転半・5回転ジャンプの難しさの例えを述べよとの愚問にも神対応

外国人特派員協会である質問者が、出産の例えを引き合いに、4回転半や5回転のジャンプの難しさの例えを求めた。これは客観的に見て愚問に思えたが、羽生選手は決して軽くあしらったりはせず真摯に対応し、かなり一生懸命に考え込んで何とか回答した。

「まず、前置きから言います。インフォメーションとして。まず、今現在ですね、世界では6種類あるジャンプの中で、4回転ジャンプをもう5種類決めています。それは、5種類決まるようになったのは、ここ3年間のうちにみんなが5種類跳ぶようになって。それでも限られた選手ですけれども。今4回転の中で、4回転半を除いて4回転の中で一番難しいジャンプを跳んでいるのは、トップスケーターで3人ほど」

「(しばらく考え込んで)まず4回転の難しさは、正直言って、人によって違うと思うんですけど。(再び考え込んで)初めてこういう質問が来ました」「えっと、目をつぶって、回転しながら三重跳びをやっている感じ、縄跳びの。4回転半は、2回転しながら四重跳びをする感じかな。5回転は3回転しながら五重跳びを跳ぶ感じ」

勝負メシは米飯、栄養管理はプロ、でもマックも炭酸もポテトチップスも平気

勝負メシの質問は、最近天才棋士少年の勝負メシの話題でスポンサー提供のコンビニ弁当だったと判明して炎上したことを想起させたが、羽生選手がパンやパスタでなく「ごはん(米飯)」と回答して、日本国民としてほっとした人も多かっただろう。

羽生選手の回答は完璧だった。「日本人としてはここは寿司とかって言いたいんですけど。ただ、競技前に生ものとかを食べることとか、そういうものは非常に危険なので。僕はいつも・・・・・・絶対にごはんは食べるようにしています。まあ、日本人らしいかな」

「やはり、パンやシリアルだったり、パスタだったり、そういったもので自分はあんまり力が出ないので、絶対にごはんをどの会場でもどの国でも食べて。そのパワーを演技につながるようにということを、いつも思って食べています」

食事の管理はどなたがという質問は、もしかしてお母さんという答えを予想した人もいたかもしれないが、ヘタするとマザコンと思われかねない地雷を、羽生選手は余裕で交わした。

「実は僕は食に対してそんなに興味がなくて、言ってみれば難しい質問がまた来た感じです。食事の管理は自分のサポートをしてくださる方がいて、会社であったり、その会社の人が栄養管理の目標値みたいなものを与えてくださっている」

「ただ、僕はどちらかと言うと、食べても太らないタイプなんで、普通のアスリートとは違う生活をしているのかなとは思います。だから、マックも、マクドナルドも行きますし、炭酸のジュースっと言やあいいんですかね、ガス入りのジュースもすごく好きだし、それと一緒にポテトチップスを食べることもよくあります」

試合に行く前にホテルの部屋を掃除する

試合前のルーティーンの質問は、当初どちらの足からスケート靴を履くかの話だったが、羽生選手は今ではどちらからでも大丈夫とのことだった。

むしろ、「情報ライブミヤネ屋」でMCの宮根誠司氏が戦いに出て行くサムライみたいだと感動していたように、羽生選手が必ずホテルの部屋を掃除してから試合に出かけるという習慣のほうが、とてもインパクトがあった。

「絶対に気をつけていうことは、これは日本人だからかもしれないですけれども、掃除をされる前から絶対に、ベッドのシーツであったり枕であったり、そういったものは絶対に綺麗にしてから出る。また、荷物の整理だとか、そういったものも、絶対に綺麗にしてから、心残りがない状態で試合に行くということは、常にしています」

北朝鮮の選手を日本に招待したいかとの意地悪な質問にも神対応

外国人特派員協会で、ある記者が北朝鮮の選手の印象と、彼らを(アイスショーなどで)日本に招待したいか、という意地悪な政治的質問をした。

羽生選手がアイスショーで一緒に滑りたいと言おうものなら、大きなヘッドラインで世界中に伝わって政治利用されかねないところだった。しかし、羽生選手は巧みに回答した。

「北朝鮮の選手とは、ペアの選手とエキシビションの練習中に会うことができました。彼らは本当に一生懸命練習していましたし、技術力も持っているなというふうに感じています」

「難しい質問が、3回目ですね。(考え込んで)えっと・・・・・・僕は政府の人間じゃないから、こういうことについてのコメントはちょっと難しいんですけど。ただ、一緒にスケートをやっていて、やっぱりスケートの仲間であることは絶対に確かなことだと思うので。彼らがオリンピックに出れて良かったと思いますし、実際に結果も取れて良かったと僕は思っています」

絶対に伝えたかったフェルナンデス選手のこと、号泣の理由も明かす

同じブライアン・オーサー・コーチの門下生の盟友である、スペインのハビエル・フェルナンデス選手についての質問に、羽生選手は待ってましたとばかりに、笑顔で想いのたけを語った。

今回ようやくオリンピックでメダル(銅メダル)を獲ったフェルナンデス選手については、これがおそらく最後のオリンピックという見方もある。羽生選手は、フェルナンデス選手が今後も現役続行するかどうかをまだ知らされていないようだった。

「実は彼が日本のメディアですごく僕のことについて語っているるのを知っていますけど、実は自分自身もスペインのメディアの方にハビエル選手について聞かれるのをちょっと待っていました(笑顔)」

「彼は本当に優しい人で、優しすぎてちょっと競技に向いていないんじゃないかなというほど優しいです」

「それでもやっぱり自分と一緒に練習する時は、すごく『絶対勝ってやる』っていうふうに2人とも思いながら練習していますし。彼がいたからこそ僕はカナダに行ってトレーニングするという選択をしました」

「実は、僕は金メダルを獲った時に泣いてしまったんですけど、その泣いてしまうスイッチが入ったのは、彼のメダルが決定したからでもありました。彼はソチオリンピックの時にメダルを獲ることができなかったんですけど、そのことをすごく悔しがっていたことをすごく知っていますし」

「また、一緒に練習してきて、オリンピックの時だけすごく無口になっていたので、やっぱりそのオリンピックでメダルを獲りたいっていう気持ちがすごく強いんだろうなと思っていたからこそ、彼のメダルというのは本当に僕もすごく誇らしかったですし、すごく嬉しかったです」

「これから一緒に試合をすることができるかどうか、ちょっと分かりませんけれども。彼がスケートをやるか、試合をやるか分からないので、ちょっと分からないんですけれども。ただ、僕が6年間一緒に彼と練習をしてきて、そして彼とお互い高め合いながら一緒に試合に出ることができて、本当に幸せだったし、彼がいなくちゃ僕はここの席にこのメダルを持って来れなかったな、というふうに思っています」

なお、羽生選手は異種スポーツのトレーニングについて、「ハビエル選手なんかは、ずっとサッカーをしています」と述べ、自身については「僕は怪我をして氷上に立てなかった期間、自転車で心肺機能や体力をつけるトレーニングをしていました」と明かしていた。

ネイサン・チェン選手がショートで失敗していなかったら?

平昌五輪のフリーで1位だったアメリカのネイサン・チェン選手が、ショートで失敗していなかったらフリーの構成を変えていたか、との問いに、羽生選手は意味深な答えをした。

「ネイサン・チェン選手がノーミスをするとかしないとか関係なく、自分ができることをやろうと思っていました。それはもうその時になってみないと分からないですし」

「ネイサン・チェン選手がもし、たらればですけれども、僕は好きじゃないけど、たらればで、僕より(ショートで)上になっていた場合は、もしかしたら自分のリミットをさらに超えたものをやれたかもしれない、それは分かりません」

宇野昌磨選手がジャンプで失敗していなかったら?

宇野昌磨選手がフリーの冒頭の4回転ループで転倒していなかったらどうだったかという質問は、羽生選手は既に似たような質問を受けたことがあったようで、手っ取り早く大胆に回答した。

「僕はあの時点でもう勝利を確信していたので、彼が4回転ループを本当に綺麗に決めていたとしても、点差的に負けることはなかったなと、まず言っておきます(笑)。すごいツッコまれたし、ファンの方々もあんまりよく思ってない方もいらっしゃったかもしれないんで、まず先制として」

「(自分は)引退する気持ちも全然ないですし、やることありますよ。ただ、引退しますって簡単に言っちゃえば、彼に任せられるというか、そういう頼もしさは感じています。ただ、人前に出る時に寝るとか、そういうことはもうちょっと学ばなきゃいけないのかな、もうちょっと面倒をみないといけないかな、とは思っています(笑)」

当面の方針と4年後の北京五輪について

羽生選手は当面は怪我の治療を優先させる方針で、世界選手権の話はしなかった。

「これがオリンピックでなければ、僕は痛み止めを飲んでこうやってピークを作ることはなかったと思います」「これからのスケート人生何が起きるか分からないんで、休んでいたと」「今回は足の状態があるので、治療に専念するという気持ちは変わってないです」

羽生選手は日本記者クラブでの会見直前に東京の中国大使館の人からかわいいパンダのペアをプレゼントされたが、4年後の北京五輪については明言を避けた。

「次のオリンピックに向けてはまだ未定という言葉が一番今の頭の中であります。自分がやりたいことは4回転アクセルだとか、もしかしたら5回転の練習もしたいって、4回転半が跳べたら思うかもしれないですし、それはまだ分かりません。今できることを一生懸命にやって、その延長戦上に北京オリンピックがあるなら、もし出るなら絶対に勝ちたいと思っています」

趣味や楽しさを感じる時

ファンは既に知っているが、趣味に関しては、羽生選手はインドア派だ。アニメや漫画が好きと言うから、日本のアニメ好きのエフゲニア・メドベージェワ選手から好かれているとかの憶測が出やすかったのだろう。また、羽生選手のイヤホン好き・音楽好きは、プログラム使用楽曲の編集にも自ら関わることにつながっている。

「僕にとって楽しいは、そうですね、もちろんゲームは大好きですし、アニメを見ることや、漫画を読むことが多いです。そういうリラックスする。自分の趣味として一番有名なのは、イヤホン収集だったり、音楽鑑賞だと思うんですけど」

「それもまた、沢山の方々に伝えて頂いて、普通の人だったら聴けないんだろうなというタイプの細かい音まで出るイヤホンやヘッドホンを沢山頂いているので、そういう時はやっぱり楽しいですね。提供してくださる方、本当にありがとうございます」

将来家族を持ちパパになりたいかの問いに、直球で回答

羽生選手は、将来家族を持ちパパになりたいか、という結婚願望についての質問に、意外なストレートな回答をした。筆者としては、まだ若いから考えていないとか、遠い将来には家庭を持ちたいとかの答えかと思っていたが、まさかファンに気遣う回答をするとは驚きだった。

「はあ、それは何て答えたらいいか分かりません。ここまで応援してくださるファンの方がいて、ファンじゃない方も今回すごく応援してくださっていて。家族を持ったら、それこそ何か裏切られたとかって言われるかもしれないし。アイドルじゃないんですけど」

「でも、そうやって応援してくださる方がいるっていうのは、すごくありがたいし」「普通の人から見たら、もう手に入れるものすべて手に入れただろ、お金も名誉も地位も。でも、僕にとってはそんなこと全然なくて。地位とか名誉とかお金ももちろんそうですけれども、結局飾られたものでしかなくて」

「みなさんといろいろ共有しながら生きなきゃいけない時間もあると思います。ただ、それは今しかできないことだし。いろんな幸せ、いろんな葛藤。そういうものをみなさんと分かち合える幸せを大事にしたいなと思います」

ちなみに、羽生選手が日本記者クラブでの会見に先立って自筆で色紙に書いた言葉は「自分を貫く」だった。羽生選手は、「後悔をしない生き方をして欲しいなというふうに思って書きました」と述べていた。

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