フィギュアスケート

羽生結弦とCHEMISTRYが氷上コラボ/ 町田樹氏PIW解説

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2018年5月25~27日に千葉・幕張イベントホールで開催されたフィギュアスケート・アイスショー「ファンタジー・オン・アイス 2018 in MAKUHARI」で、ソチ・平昌五輪金メダリストの羽生結弦選手が実力派男性デュオのCHEMISTRYとコラボした(オリコンの2018年5月28日付「羽生結弦×CHEMISTRYが氷上コラボ『気持ちよく滑れました』」などを参照)。

5月28日の日本テレビ系「PON!」でも、5月26日のこのコラボの模様が、ダイジェストで放送された。

VTRの冒頭では、いきなり青い上衣と黒のボトムスの羽生選手がトリプルアクセルを跳んで、難なく成功させた場面が映し出されていた。羽生選手は4月のアイスショーでは右足首のリハビリ途上であったため、氷上ではステップとスピンだけの演技にとどめていた。今回のアイスショーでのジャンプは平昌五輪のエキシビション以来で、羽生ファンは大感激だった。

今回の羽生選手の楽曲は、羽生選手自らが選んだというCHEMISTRYの「Wings of Words」(2005年)だった。CHEMISTRYはリンクサイドでシルバー地に赤や黒が入った衣装で、バンド演奏とともに生歌唱していた。

インタビューで羽生選手は「自分も幼い頃から聴いていて、自分の思い入れのある曲で滑らせて頂いたので。そしてやっぱり、生(演奏)ということで、本当に気持ちよく歌って頂けたので、僕自身も気持ちよく滑れました」と語っていた。

一方、CHEMISTRYの川畑要は「羽生選手のスケートを見ていると、歌も伸びやかになって気持ちよかった。すごく良い経験をできました」と述べていた(前出のオリコンの記事)。
Amazon: Wings of Words [デジタルミュージック 単曲配信] (CHEMISTRY) 2005/7/26

町田樹氏が「プリンス アイスワールド 2018」横浜公演を解説

プロフィギュアスケーターの町田樹(たつき)氏が、BSジャパンが2018年5月20日に放送した「プリンス アイスワールド 2018」横浜公演の映像で、解説者を務めた。

現役時代にはその独特の言葉の表現力で「氷上の哲学者」と呼ばれていた町田氏自身も、このショーで自ら振付した8分にもわたる超大作「ボレロ」を披露していた。

このショーには、自ら振付したプログラムを披露した村上佳菜子氏(これからはミュージカルや演劇にも挑戦したいそうだ)、織田信成氏、安藤美姫氏、本田武史のように、現役引退した著名プロスケーターも出演していた。ただし、ここでは町田氏の主要現役選手と自身の演技の解説のポイントのみを書き留めておく。

友野一希選手「Draft Punk」

町田氏は、「彼の最大の武器は、安定感のあるトリプルアクセル」と述べ、選曲については「ダンス界ではマスターピースの1つなんです。踊りに自信がある証拠なんです」と話した。

友野選手の振付には序盤の黒いゴーグルのようなサングラスが使われたり、ロボットダンスが採り入れられたリしていた。町田氏は「演技後のお辞儀もロボットダンスをしてたんですよ。最後までパフォーマンスをするプロとしての心意気も見られました」と述べた。

本郷理華選手「KILL BILL」

本郷理華選手と同じクラブの先輩のプロスケーターの鈴木明子氏もかつてこのプログラムを滑っていたが、町田氏は「鈴木さんがやった『KILL BILL』とは異なって、かなりダンサブルな仕上がりになっています」と述べた。

本田真凜選手「I Really Like You」(振付:キャシー・リード)

今春よりネイサン・チェン、アダム・リッポン、アシュリー・ワグナーといった大物選手と同じラファエル・アルトゥニアン・コーチに師事するようになった本田真凜選手の陽気なアメリカンっぽい曲を用いた演技を見ながら、町田氏は「ダブルアクセルのスタイルなんかは、ラファエル・コーチのスタイルにもう変更されてますね」とコメントした。

また、町田氏は「ラファエル・コーチのジャンプのスタイルはロシアなので、彼女にフィットするかどうかが今後のカギだと思っています」と述べた。

樋口新葉選手「マイケル・ジャクソン・メドレー」

樋口新葉選手のプログラムについて町田氏は「随所にマイケル・ジャクソンへのオマージュが感じられる振付も導入されています」と述べた。

樋口選手の演技後半のジャンプを見ながら、町田氏は「トリプルサルコウが鬼門になるんですけれども、後半に組み込んできたので、彼女の意地を感じました」「体力的に厳しいなか、これだけ質良くトリプルルッツを決められるのは、彼女の強みです」と語った。

坂本花織選手「ブエノスアイレスの春」

タンゴの楽曲を使用した坂本花織が力強いジャンプを決めると、町田氏は「このダブルアクセル-トリプルトウのコンビネーション・ジャンプの飛距離は、秀逸でしたね。なかなか男性スケーターでも、この飛距離は出せないと思います」と絶賛した。

また、町田氏は「彼女が昨シーズン成長した大きな理由の一つは、ジャンプの飛距離、クオリティーだと思います。おそらく彼女にとって最大のライバルは、同門の三原舞依選手だと思います」と述べた。

田中刑事選手「椿姫」

田中刑事選手の序盤のジャンプを見て、町田氏は「静かで自然なランディングですよね。これ、誰もができることではない。非常に高度なスキルです」と称えた。

村上大介選手「Photograph」

27歳になって日本男子シングルで最年長となった村上大介選手は、金髪になっていた。町田氏は、「村上選手は、ループを非常に得意としている選手なんです。コンビネーションにループを付けられる、稀有な選手なんです。日本にはほとんどいないんです。セカンドにトリプルループを跳べる選手が」と称賛した。

宇野昌磨選手「Time After Time」(振付:デイヴィッド・ウィルソン)

宇野昌磨選手は、アイスショーの1週間前にカナダで完成させたばかりの新しいナンバーを披露した。黒い衣装に赤いリボンタイだった。パーティーの後で、気に入った女の子を誘うようなイメージだそうだ。

町田氏は、「このプログラムのジャンルは、ジャズだと思いますが、(宇野選手は)『ジャズは苦手としているジャンルなので、このプログラムを滑ることで克服していきたい』と語っていました」と話した。

町田氏は宇野選手がこのアイスショーの冒頭に登場した際に、宇野選手について「強みは高速スピン」と述べていたが、宇野選手はこの演技の締めくくりに、見事な高速スピンを披露した。

町田樹ワールド「ボレロ:起源と魔力」

まずは、このアイスショーの冒頭で、町田氏はハケる際にエアドラムの振りをした。町田氏のソチ五輪のエキシビションでのエアギターを覚えているファンは、歓喜に沸いたと思われる。

町田樹氏自身が振付をした新プログラム「ボレロ」は、8分間にもわたる超大作だった。使用楽曲は、フランスの印象派作曲家のモーリス・ラベルの代表作であるバレエ音楽「ボレロ」だ。

町田氏は上衣は黒のシースルーというか、メッシュの衣装だった。ボトムスは黒で、赤紫(本人は深い赤と言っていた)の布地のサッシュベルトを締めていた。

町田氏の公式サイトには「ボレロ:起源と魔力」とのタイトルで、このプログラムについて長々と説明文が綴られている。

今回の町田氏自身による解説は、こんな感じだった。

「この作品はスケートの魔力にとりつかれた1人の男の姿を、象徴的に描いていく作品です」「この冒頭は、フィギュアスケートの初源であるコンパルソリーフィギュアを振付に応用しています」

「深い森の中、月明かりの中で、男は滑っている情景なんですけど、照明の演出もあって、観る角度によって見え方が違うんですよね。照明の光源と対角線上にいる観客は、私の体が逆光になって、シルエットだけ見えるという形になります。今回、夜明けから日の出までの空の情景をライティングで演出しました」

「私は振付をする上で、プログラム全体のスケートの軌道にもこだわりました。幾何模様を描くことで、技術性を表現したいと思いました。」「深い赤のサッシュベルトは、実はタイシルクで、半世紀以上前の生地なんです」

町田氏は緩やかな舞からアスリートらしいダイナミックなダンスやジャンプまで展開した。8分の長さだから、相当ハードだったはずだ。夜明けの設定で照明が明るくなっていったが、演技終了と同時に暗転した。男が湖面から忽然と姿を消す、というストーリーを表現していた。

素晴らしい町田ワールドだった。町田氏以外にこんなことができる人はいない。なお、町田氏は6月14日発売の「フィギュアスケート日本男子ファンブック Quadruple Axel 2018 奇跡の五輪シーズン総集編」の中の「総合芸術としてのフィギュアスケート」という企画に登場する。

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