平昌五輪のフィギュアスケート団体戦は、開会式当日の2月9日の午前10時、つまり夜の開会式前に男子シングルのショート・プログラムで始まった。
国単位でショートの順位ポイントが上位5チーム以内でないとフリー・スケーティングに進めないため、メダルを狙う国々はエース級を男子シングルのショートに投入してきた。ただし、怪我からの復帰でぶっつけ本番となる羽生結弦選手は、2月16日から始まる個人戦に照準を合わせたとみられる。
オリンピックの場の雰囲気にのまれたのか、大物選手らが次々と大技ジャンプでまさかの転倒や回転抜けのミスを連発して自滅していった。最終滑走の日本の宇野昌磨選手(20)は余裕で普段通りに演技ができ、完璧ではなかったが、103.25点で断トツ1位だった。
男子ショートの結果、1位は日本で10ポイントを獲得した。2位はオレクシイ・ビチェンコ選手(30)が出たイスラエルが9ポイント、3位はパトリック・チャン選手(27)が出たカナダが8ポイント、4位はネイサン・チェン選手(18)が出たアメリカが7ポイント、5位はマッテオ・リッツォ選手(19)が出たイタリアが6ポイントを獲得した。
なお、ペアの演技で、日本の木原・須崎ペアは自己ベストの57.42点をマークした。ペアのショートの順位は8位(3ポイント)で、世界の壁の厚さを感じたが、オリンピックという大舞台で自己ベスト更新ができたのは素晴らしい。
宇野選手は最小限のミスで余裕の1位
日本の宇野選手は最終滑走だった。だが、その前までに大物選手たちがオリンピックの大舞台で緊張したのか、4回転やトリプルアクセルなどの大技ジャンプでミスをして実力を発揮できず、期待外れの得点で終わっていたため、宇野選手は普通にできれば余裕で1位だろうとの予感はあった。
使用楽曲はビバルティの「四季」より「冬」。宇野選手は冒頭の4回転フリップで、左手を付いてしまい、出来栄え点が▲2.86点の減点になった。しかし、その後は完璧で、後半の4回転トウループ-トリプルトウループでは1.86点、トリプルアクセル2.29点の加点が付いた。演技終了時に宇野選手は笑顔を見せた。
ショートの得点は103.25点(技術点56.64点、演技構成点46.61点)で、断トツ1位だった。演技後のインタビューでは、宇野選手はオリンピックという特別の場の雰囲気には影響されなかったとのことで、「最後まで自分の演技ができたんじゃないかな」と述べていた。
2位はノーミスのイスラエルのビチェンコ選手
2位はイスラエルのベテランのオレクシイ・ビチェンコ選手だった。楽曲は「ハバ・ナギラ」。ビチェンコ選手はトリプルアクセル、4回転トウループ、トリプルルッツ-トリプルトウループの連続ジャンプの3つとも成功させ、加点を得た。ショートの得点は自己ベストの88.49点(技術点47.59点、演技構成点40.90点)で2位だった。
3位は表現力のパトリック・チャン選手
3位はカナダの、ソチ五輪銀メダリストのパトリック・チャン選手だった。楽曲は「Dust in the Wind」。冒頭の4回転トウループの連続ジャンプの1つ目で転倒して▲4.00点減点となった。次のトリプルルッツにダブルトウループを付けて連続ジャンプにした。しかし、後半のトリプルアクセルで転倒して▲3.00点減点となった。
美しいスケーティングは健在で、表現力を問われる演技構成点では宇野選手に次ぐ高得点だった。ショートの得点は81.66点(技術点38.56点、演技構成点45.10点、減点▲2.00点)で3位だった。
ネイサン・チェン選手がジャンプミス連発でまさかの80点台
4位はアメリカの、今季グランプリ・ファイナルを含め全勝し、金メダル候補のネイサン・チェン選手だった。楽曲は「ネメシス(Nemesis)」。
冒頭は4回転フリップ-トリプルトウループの予定だったが、1つ目の着氷時に詰まったようで、2つ目はダブルトウループにとどめた。この連続ジャンプでは▲0.17点の小幅減点となった。
しかし、後半のジャンプはより大きなミスになってしまった。4回転トウループは回転が抜けてダブルトウループになり、2回転半以上の条件を満たせず無効で0点になった。さらに、もともと苦手と言われていたトリプルアクセルではまさかの転倒で▲3.00点の減点となった。
結果、ショートの得点は不本意な80.61点(技術点37.73点、演技構成点43.88点、減点▲1.00点)で、4位だった。
ロシアのコリヤダ選手も崩れる
ロシアから個人の資格で出場したチームのミハイル・コリヤダ選手は、ジャンプのミス連発で、まさかの8位に終わった。
楽曲は「モーツァルトピアノ協奏曲23番」。冒頭の4回転ルッツで転倒し、次の4回転トウループでは転倒して、コンビネーションにできなかった。さらに、トリプルアクセルがまさかのシングルアクセルで無効の0点になった。ショートの得点は74.36点(技術点33.75点、演技構成点42.61点、減点▲ 2.00点)で、8位だった。