平昌五輪のフィギュアスケート団体戦の女子フリー・スケーティング競技が2018年2月12日のお昼頃から行われた。日本の坂本花織選手(17)は、初出場のオリンピックで、ジャンプのちょっとしたミスから何とか立て直して頑張ったものの、ロシアの天才少女を筆頭に強豪選手がひしめく中、5位に終わった。
断トツ1位となったのは、ロシアのシニアデビュー1年目のアリーナ・ザギトワ選手(15)で、オリンピックの大舞台でフリーの自己ベストを更新する158.08点をマークした。
同じエテリ・トゥトベリーゼ・コーチの門下生であるエフゲニア・メドベージェワ選手(18)が持つフリーの世界歴代最高の160.46点にあと少しの高得点だった。この2人の天才少女の個人競技での頂上決戦は、凄いことになりそうだ。
2位はトリプルアクセルを成功させたアメリカの日系人・長洲未来選手(24)、3位はダイナミックなジャンプが武器のカナダのガブリエル・デールマン選手(20)、4位は豊かな表現力で魅せるイタリアのベテランのカロリーナ・コストナー選手(31)だった。
女子フリー終了時点で、日本は5位で、カナダの団体優勝と個人参加のロシアチームの2位が確定した。その後、アイスダンスのフリー・ダンスで日本の村元・リード組が88.88点で5位となり、国別の3位はアメリカ、4位はイタリア、5位は日本で終わった。
坂本花織選手はミスで焦るもリカバリーの機転を発揮
2番滑走の坂本花織選手は、直前に演技をしたアメリカの長洲未来選手がトリプルアクセルを成功させて大歓声が巻き起こっていた中でリンクに出たため、心理的に大丈夫かと懸念された。楽曲は「映画『アメリ』より」。
冒頭のトリプルフリップが連続ジャンプの予定が単独になり、回転不足を取られた。競技後のインタビューで、坂本選手は「最初のジャンプのミスで焦った」と振り返っていた。
その後のジャンプは、トリプルルッツでは踏切エッジが不明瞭との判定になって出来栄え点が小幅減点になった以外は、出来栄えでの減点はなしで済んだものの、加点が伸び悩んだ。
焦りがあったと言いつつも、ミスを受けてリカバリーを図る機転も見せた。トリプルフリップの連続ジャンプの2本目を2回転から3回転のトウループに変更した。また、ダブルアクセルの3連続ジャンプの予定が2連続になった代わりに最後の単独のダブルアクセルに、ダブルトウループを2つ付けて3連続ジャンプにした。
フリーの得点は131.91点(技術点65.51点、演技構成点66.40)で、フリー5位だった。演技終了時に日本チームに向かって謝る仕草を見せていた。
天才少女アリーナ・ザギトワ選手が圧巻の演技
ロシアの2人の天才少女のうちの1人である、シニアデビュー1年目のアリーナ・ザギトワ選手が、またしても圧巻の演技で圧倒した。楽曲は「『ドン・キホーテ』より」。ジャンプなどの技術も断トツながら、バレエ音楽にふさわしいバレリーナのような美しい舞いで魅了し、演技構成点でもトップだった。
ジャンプは全て基礎点が1.1倍の演技後半に入れていて、全てのジャンプで加点を得た。特に、両手を頭上に挙げて臨んだトリプルルッツは、出来栄えで2.00点の加点を獲得した。
フリーの得点は自己ベスト更新の158.08点(技術点83.06 、演技構成点75.02点)で断トツ1位となった。
なお、NHK総合テレビの生中継がザギトワの貴重な演技の最中に放送時間切れとなり、画面が一瞬途切れて2チャンネルに切り替わるという無粋な事態が発生したのに、むっとした視聴者も多かったのではないだろうか。
長洲未来選手がトリプルアクセルを大成功させ2位
アメリカの日系人・長洲未来選手は、今シーズンはトリプルアクセルで勝負に出ており、オリンピックの舞台でついにしっかりと加点を得た。楽曲は「ミス・サイゴン」。
冒頭のトリプルアクセルで、着氷に成功しただけでなく、1.57点の加点を得る偉業を達成した(長洲選手は11月のNHK杯でもトリプルアクセルを跳んだが、減点に終わっていた)。次のトリプルフリップ-トリプルトウループで何とか堪え、その後のジャンプではすべて出来栄え点で加点を得た。
フリーの得点は自己ベスト更新の137.53点(技術点 73.38点、演技構成点 64.15点)で、フリー2位だった。ノーミスで演技を終えて、長洲選手はガッツポーズで喜びを炸裂させた。また、長洲選手の快挙に、アメリカ・チームのアダム・リッポン選手が涙ぐんでいた。
ガブリエル・デールマンは高さのあるダイナミックなジャンプで魅了
カナダのガブリエル・デールマンは、昨シーズンのフリーの楽曲「ラプソディー・イン・ブルー」に戻して、オリンピックに臨んだ。
高さのあるダイナミックなジャンプが持ち味で、後半のトリプルループで回転不足を取られた以外は、全てのジャンプで出来栄え加点を得た。フリーの得点は137.14点(技術点68.86点、演技構成点68.28点)で、フリー3位だった。
カロリーナ・コストナー選手はジャンプのミスを表現力でカバー
イタリアのカロリーナ・コストナー選手は、今回の5人のうち唯一、団体戦ショートに続いての出場となった。年齢と共に疲労回復が遅くなるという話もあるから、もしかしたら31歳のコストナー選手には、連続出場が他の選手と比較して不利に働いたかもしれない。楽曲は「牧神の午後への前奏曲」。
冒頭のトリプルルッツは綺麗に決まって出来栄えで1.50点の加点を得たが、他のジャンプは得点が伸び悩むかミスをするかになってしまった。トリプルループでは着氷が乱れて減点となり、後半のダブルアクセルの3連続ジャンプと単独のダブルアクセルでは回転不足を取られた。
それでも、豊かな表現力を武器に演技構成点では1位のザギトワ選手に次ぐ高得点を得て、フリーの得点は134.00点(技術点59.73点、演技構成点74.27 点)で、フリー4位だった。