循環器系

運動不足と低用量ピルで、血栓ができて肺に飛び、激しい息切れに襲われた怖い体験

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四十路に入ってかなり忙しい会社員だった時の実体験です。30代後半以降の基礎代謝の低下、多忙による運動不足とストレスによる毎晩の缶ビールで(250mlまでと決めてはいましたが)、当たり前ですが、体重がどんどん増えて行った時期でもありました。

息切れの原因は酸素不足? 精密検査に行かないまま自然に回復

そのうち、坂道や階段を上る時、尋常じゃない息切れを感じるようになりました。太ったから体が重くて息切れがするのだろうとは思いましたが、それにしてもひどいので、念のため、当時の会社近くのクリニックを受診しました。

ちゃんと、何科に行くべきか考えました。内科にも「消化器内科」とか「呼吸器内科」とか看板に書いてあるところがありますが、その時は直感的に心臓を連想し、「循環器内科」の看板が出ていたクリニックを選びました。

そこでは、今までやったことのない検査をされました。片方の手の人差し指を、小型の何かの測定器に差し込むよう指示されました。そこで、指を圧迫すると、数字が表示される、というものでした。

表示された数字は「93」くらいでした。先生に「これは何ですか?」と尋ねたら、「酸素が不足していますね」と言われました。後でネットで調べたら、血中酸素濃度を調べていたんですね。どのくらいが適正水準なのか、先生は何もおっしゃらなかったんですが、ネットで調べると、単位は%で、健常者は96~100%とされていました。

また、「心電図に気になるところがある」とも言われました。その先生は、「大きな病院を紹介しましょうか?」とおっしゃいました。小さなクリニックでは、息切れの原因が特定できないということだったのでしょう。

しかし、当時の私はワーキングマザーでもあり、とにかく毎日早朝から深夜まで忙しくぎりぎりの生活でした。責任ある仕事を任されたものの慣れるのが大変だった時期でもあり、検査や診療の待ち時間も長く、半日がかりとなる大病院への通院など、到底無理だと思いました。結局、答えを保留し、2度とそのクリニックには行きませんでした。

その後、理由は不明ですが、息切れの程度が軽くなったので、治ったのだろうと勝手に思い込んでいました。医者に行くこともなく、4、5年が経過しました。その間、勤務地が変わり、通勤時間も増え、以前にも増してストレスがかかる仕事環境になっていきました。

激しい息切れが復活し、どんどん悪化

そして、忘れかけていた坂道や階段を上る時の激しい息切れが復活しました。当時、通勤で利用せざるを得なかった職場近くの駅は、階段を使わざるをえない部分があって、本当に大変でした。階段の途中で、あるいは頑張って何とか階段を上り切ってからひと休みしないと、もう動けなくなる状態でした。

仕事の大半はデスクワークでしたが、時々取引先を訪問しなければならず、取引先のビルの入口が階段の上だったりすると、本当に大変でした。でも、病弱な人と思われるとマイナスに評価されるだろうと懸念し、いかにして同行者にこの苦境を悟られないようにするか、そればかり考えていました。

以前同じような激しい息切れを経験した時は、自然に軽くなって治ったと思っていたので、今度も自然に治るだろうと思いました。しかし、一向に軽くなりませんでした。

それどころか、今度は気分が悪くなりました。ごく軽い吐き気のような感じが続きました。つわりの時は、元気なのに一日に何回も突然激しい吐き気に襲われ、必死で闘う、という状況でした。

しかし、今回はじわじわと気分が悪くなりました。実際に嘔吐することはありませんでしたが、それでも食事で食べられるものが限られるようになりました。そのうち、毎日昼食は1人で近くのお茶漬け屋さんに行って、温かいお茶漬けを何とか頑張って食べるだけになりました。

「ただの貧血」と誤診

さすがに不安になって、近くの内科クリニックを受診しました。その内科クリニックは、週に1回か2回は循環器内科の先生もいらっしゃるようでしたが、私が受診した日は循環器内科の先生は不在で、糖尿病が専門で、有名大学病院を退職なさった年配の先生が主治医になりました。実はこれが、痛恨のミスだったと後で判明することになりました。

その先生は「貧血でしょう」とおっしゃって、鉄剤と吐き気止めを処方なさって、それで終わりでした。確かに、吐き気止めを飲むと、気持ち悪いのは一時的に解消しました。しかし、息切れは治りませんでした。

しばらくするとまた、気分が悪くなりました。息切れも相変わらずです。そこで、2度ほどまた受診し、「治らないですけど」と訴えて、その都度鉄剤と吐き気止めを処方されました。

しかし、症状は苦しくなっていきました。よく毎日通勤できたな、と今になって思います。会社の近くの駅で、ほんの少しの階段部分を上がることすら、本当に大変になっていました。立ち止まって、しばらく休まなければ動けませんでした。

会社では、周りにこの窮状を悟られないよう、細心の注意を払っていました。能力主義の厳しい会社でしたから、子持ちでしかも病弱だと思われたら、絶対にリストラされてしまう、と危機感を持っていました。幸か不幸か、この時期私は仕事が評価されず、以前に比べて窓際族的になって仕事量が少し減っていました。精神的には落ち込む半面、体力的には仕事が減って、明らかに助かっていました。

突然足のふくらはぎがパンパンに膨張

ある日、気が付くと、右足のふくらはぎから足首までが、パンパンに膨張していました。触っても全く柔らかくありません。左右のふくらはぎの太さにものすごい差がついていました。不気味すぎて、不安すぎて、頭はパニック状態です。

お医者さんに見せなきゃ、と思い、昼休みに思いついて行ったのは、近くの整形外科クリニックでした。レントゲンを撮り、「これは外科じゃありません。内科的な問題でしょう」と言われて終わりでした。

ちなみに、この時ふくらはぎがパンパンに膨張した(むくんだ)理由については、後年、同じ症状に再び見舞われた時に、循環器内科のお医者さんから説明がありました。医学の素人の私が何とか理解した範囲でまとめると、どうやら血液が本来流れるべき血管が血栓で詰まってしまい、行き場を失って滞留してパンパンに膨れ上がった状態になってしまったようでした。

当たり前と言えば当たり前なんでしょうが、整形外科の先生は、この足の膨れ上がった理由に皆目見当がつかない状態でした。やはりお医者さんはご自分の専門以外のことはあまりご存知ないんですね。

ともあれ、その日は昼休みに整形外科で時間を取られてしまい、勤務時間中にクリニックをハシゴして内科に行く余裕などありませんでした。ただ、帰宅時に背中や肩のコリもあったので、マッサージ屋さんには行きました。

マッサージ屋さんで、当時私を担当してくださっていた(割と上手な)人は、私のパンパンに膨れ上がった右脚を見て、恐怖の表情を見せました。その人は急いで店長に相談に行き、その日は私の脚には一切触れないで、頸や肩などだけをマッサージされただけでした。

人間どっくの心電図で異常と診断

その翌日は、人間どっくでした。人間どっくは、鉄剤と吐き気どめを処方された内科クリニックに併設された検査専門のクリニックで受けました。外来とは別の、検査専門のお医者さんが担当されていました。

そこで私は、心電図で引っかかりました。担当の女医さんが、「すぐに内科を受診してください」とおっしゃいました。その時点で、循環器内科の先生を受診できたら多少違う展開になったのかもしれませんが、やはり日頃の主治医の先生ということで、私は鉄剤と吐き気止めを処方してくださった、いつもの老先生の診察室に通されました。

意外にも、今回は、主治医の先生は慌てておられました。いきなり「今まで辛い思いを長くさせて悪かったね」と謝られたのにはびっくりしました。

病名について、その先生は「拡張型心筋症の疑いがあります」とおっしゃいました。初めて聞く病名でした。

先生に、「大きい病院に紹介状を書きますが、どの病院がいいですか?」と尋ねられました。私は大きい病院にかかった経験などありませんでしたから、いきなり聞かれても、名前が浮かびません。

ちなみに、先生がお辞めになった有名大学病院については、「混んでいるから」という理由で、対象外とされました。本当は、これまでの見通しとか誤診がバレたら恥ずかしいから除外なさったのかもしれませんが、定かではありません。

結局私は、どの大病院に行くべきかノー・アイデアだったため、紹介先を決めない形式の紹介状を書いて頂きました。

クリニックを出て直ぐに、内科医の夫を持つ友人にメールで「拡張型心筋症の疑いって言われた」とメールを出して、調べてもらいました。しばらくして返信をもらいましたが、遠からずして命にかかわるであろう重篤な病気だと言われ、顔面蒼白になりました。私の人生、終わるんだ、と生まれて初めて考えました。

その夜、何が何だかよく分かっていない私は、自分よりもはるかに何が何だか分かっていない家族に、「明日大きい病院に行く」と宣言し、ネットで病院情報を調べました。仕事をしながら通院できる距離にあって、お金もあまり高くなさそうなところ(つまり、いわゆるセレブ系でないところで、万一手術になっても多額の謝礼金を払わなくて良さそうなところ)に決めました。

翌日、昼休みの少し前にフライングして会社を出て、タクシーで急いでその大病院に行きました。午前の受付終了前に何とか間に合いました。大病院は初めてで、広くて大勢人がいるんだ、と驚くばかりでした。

担当の先生は40~50代くらいに見えました。私は「拡張型心筋症ですか?」と単刀直入に尋ねましたが、その先生は私が言った病名には全く関心を示さず、「そうじゃないと思いますが」と、別の病気を疑っておられました。

採血して、心電図を撮って、肺のレントゲンを撮って、と人間ドックと同じことをやりましたが、そこで生まれて初めてCTなるものをやらされました。同意書にサインする際に、「造影剤にアレルギーはありますか?」と聞かれましたが、何のことやら分かりませんし、いずれにせよCTの経験がないから、アレルギーの有無も分かりません。

先生は「やっぱりな」という表情でした。「何の病気ですか?」と尋ねたところ、「肺血栓です」と言われました。これも初めて聞く病名でしたが、「脳血栓」という病気は聞いたことがあったので、その類の病気で、「脳」ではなく「肺」が関わるものだろう、と推測しました。

いきなり「このまま入院してもらいます」と宣告されて、私は驚きました。だって、仕事の途中で、昼休みに受診しに来たので、職場の上司にも詳しい事情は何も言っていませんでした。それが、そのまま入院なんて、あり得ますか?

「それは困ります。何とか通院でお願いします!」と必死で訴えましたが、先生は軽く微笑んで「命にかかわるから、そういうことはさせません」とおっしゃいました。

もっとも、ベッドが一杯だったら、他の病院に送られるところでしたが、幸いその病院に空きがあったので、即入院が決定しました。指示されるままに書類を書いて、急いで家族と職場に連絡しました。

夫はあいにく仕事が休みで登山に行っていて、連絡がつきませんでした。娘のほうは学校に電話したら、運よく職員室に担任の先生がおられたので、先生から伝えて頂くことにしました。

その後、その先生が「もう一つやらなきゃならないことがあります」とおっしゃった直後の記憶が曖昧なのは、もしかしたら麻酔の注射か何かを打たれたのか、疲れて眠くなったのか、よく分かりません。私の持って来たバッグが、透明なビニールの袋に入れられたのは覚えています。首の後ろ側に何か刺された感じでした。

後で、改めて病棟で先生とお話ししたり、スマホで検索したりして分かったのは、正式な病名は「肺血栓塞栓症(そくせんしょう)」でした。「エコノミークラス症候群」と言われて、ようやくピンと来ました。

右脚のふくらはぎのあたりにできた血栓(これだけなら「下肢深部静脈血栓症」という病名です)が剥がれて飛んで、血管で移動して肺に詰まって呼吸困難になって、息切れを起こしていたのでした。あの日、人間どっくで異常が発見されなかったら、そのまま死んでいたかもしれません。

また、私の記憶がもうろうとしている中で行われていたのは、下大静脈フィルター留置術と呼ばれるもので、後で生命保険手術給付金の対象となりました。

入院中は、血液サラサラにするヘパリンの点滴を受けながら、飲み薬のワーファリンの適正量が決定されるまで2日に1回は血液検査を受け続けました。結局、適正量が決定されて晴れて退院できるまで3週間かかりました。

運動不足、ピル服用、悪玉コレステロール高めはいずれもリスク

では、下肢深部静脈血栓症やさらに進んだ肺血栓塞栓症になりやすいのは、どういう人なのでしょうか。

何と言っても、やはり「エコノミークラス症候群」と呼ばれているように、長時間同じ姿勢で動かずにいる人が危ないです。実際、震災の時に車で寝泊まりした人たちの中には、「エコノミークラス症候群」を患った方も結構おられたそうです。

私自身、運動不足なうえ、デスクワークがほとんどで、忙しいと数時間は座りっぱなしでトイレにもなかなか行けませんから、まさに「エコノミー症候群」になりやすい環境にありました。

また、その病院の先生によると、私と同じ肺血栓を起こした患者さんに多いのは、「ピルを服用している女性」とのことでした。実際、日本産科婦人科学会の公式サイトを見ても、「ピルが血栓症のリスクを増大させることは間違いのない事実」との記述があります。

実は、他ならぬ私自身が、(避妊目的ではなく)月経スケジュールを管理・調整するのに便利だから、という理由で、息切れがあった時期に低用量ピルを服用していたのです。

まさかこんなことになるとは、全く考えもしませんでした。婦人科クリニックで低用量ピルを出してもらった時、血圧測定をされたことはありましたが、血栓の危険性などについては、何も聞かされていませんでした。保険外のピルは儲かるから、借金抱えて開業した婦人科医としては、積極的に売りたいのかもしれませんね。もちろん、残りのピルは全部捨て、ピルとは完全決別しました。

また、血液検査で、悪玉コレステロールの値が高めなことも知りました。というか、「コレステロール」という言葉をまともに聞いたのはこれが初めてでした。悪玉コレステロールの値が高め、つまり脂質異常症だと、血流が悪く、最終的に血栓ができやすくなります。

要は、私は「エコノミー症候群」を起こしやすい仕事・生活環境で、しかも血液凝固を促進しやすいピルまで飲んでいて、脂質異常症でもありました。このため、血栓症ひいては肺血栓塞栓症になるべくしてなってしまったようです。

教訓: 運動・食生活が大事、ピルに注意、医者は専門分野をチェックすべし

今回大変な目に遭って得た教訓はまず第一に、運動や生活習慣の大切さでした。適度な運動に関しては、私がかかった血栓症だけでなく、他のいろんな体の不調を来さない一助とするうえでも、大事であることは言うまでもありません。また、食生活も、たとえばコレステロールが多い食品をなるべく摂らないようにするなど、見直さざるをえなくなりました。

第二に、低用量ピルを含め、ピルを服用する人は、血栓症のリスクについて知っておくべきだ、ということです。この点は、後に婦人科のお医者さんとお話しする機会がありました。ピルの服用も含め、ホルモン剤を服用することによる血栓症のリスクと、ホルモン剤を服用することによる効用・メリットを慎重に比較していくしかないということでした。

そして第三に、お医者さんは自分の専門のこと以外の知識は結構疎いので、循環器系の疾患は、循環器の専門のお医者さんにかからなければならない、ということを改めて学びました。

今回命を救って頂いた大病院の先生によると、普通の小さなクリニックで、肺血栓塞栓症を発見することはほぼ無理、とのことでした。でも、循環器の経験のあるお医者様なら、ピンときて大病院に紹介可能です。私も、息切れが悪化した際に、はじめから循環器内科のお医者様に診てもらえていたら、もっと早く血栓症だとの結論を得ていたかもしれません。


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