最近「ロカボ」な食品についての話題を見聞きすることが増えてきました。スーパーマーケットに行けば、ロカボナッツだの、ロカボクッキーだのが売られています。ですが、そもそも「ロカボ」とは、一体どういう意味なのでしょうか。
元々、ロカボの語源は、炭水化物の少ない食事療法(a low-carbohydrate diet)を短縮した和製英語でした。しかし、ややこしい話ですが、「ロー・カーボ」というのは、極端な糖質制限も含んでしまう概念で、昨今よく見聞きする「ロカボ」はそれとは違います。
「ロカボ」は、2013年設立の一般社団法人食・楽・健康協会が推奨する適正な糖質量の概念で、糖質を1食20~40g、1日70~130gに制限することを提唱しています。これが、「低糖質食」や「糖質制限食」という概念として広まりつつあります。
調べてみると、「ロカボ」という言葉は、同協会の登録商標でした。私自身はその協会とは無関係ですが、糖質制限食の具体的例として分かりやすく便利なので、以下でもこの言葉を使用することにします。
糖質の何が問題なの?
そもそも、なぜ糖質を制限すべきなのでしょうか。
私たちは学校の家庭科で、炭水化物とはエネルギー源である、と習いました。しかし、正確には、炭水化物は①エネルギーとして利用できる「糖質」の部分と、②「食物繊維」の部分からできています。
この2つの成分のうち、生活習慣病との因果関係で、摂り過ぎれば問題視されることが多いのが、①の「糖質」部分なので、これを制限しましょう、というのがロカボの食事の考え方です。②の食物繊維については、一般に最もよく知られているのが便秘防止効果ですが、生活習慣病についても、糖質とは逆に、予防的に働くものと考えられています(食・楽・健康協会の公式サイトより)。
食・楽・健康協会の公式サイトによると、食後高血糖が動脈硬化症や認知症に関わることが知られており、また、食後高血糖によって生じる酸化ストレスはがんに関わっている、とのことです。さらに、同協会は、2012年の国際肥満学会機関誌「Obesity Reviews」で報告された分析結果として、「糖質制限食は①体重減量、②血糖改善、③脂質改善、④血圧改善に有効」と述べています。
ロカボは、あくまでも糖質「制限」の食事であって、糖質「排除」ではありません。また、糖質以外の、エネルギー、脂質、たんぱく質、食物繊維などの制限はありません。なお、ロカボは糖質だけに注目していますから、ダイエットに関しては、それ以外のエネルギー源(例:脂質)や運動も考慮する必要があります。
ごはん茶碗一杯山盛りでは糖質が多すぎる?
ちなみに、株式会社デルタインターナショナルが販売している「ロカボクッキー」の袋には、ロカボについて、「食・楽・健康協会が提唱している、1食の糖質量を20~40g、間食の糖質量を10gに抑え、おいしく楽しく適正糖質を取ろうという考え方」と記されています。
はあ? 糖質制限するのにおやつを食べるんですか? とのツッコミはごもっともです。つまるところ、おやつを食べようが食べまいが、同協会が提唱しているのは、1日の全ての糖質摂取の合計を70~130gという基準の範囲内にとどめましょう、ということなのです。あれ、随分レンジが広いんですね、とのツッコミもごもっともです。人によって健康状態が違いますから、幅があっても不思議はありません。
しかし、問題は、どの食品がどれだけ糖質を含んでいるか、いちいち分からないよ、ということです。そこで、糖質が多そうな食品をピックアップしてみました。
表 主な食品の100グラム当たりの糖質量(グラム)
炊いた精白米 36.8
炊いた玄米 34.2
もち 49.5
食パン 44.4
フランスパン 54.8
ゆでた中華麺 27.9
ゆでたスパゲティー 26.9
ゆでたうどん 20.8
さつまいも 29.2
じゃがいも 16.3
バナナ 21.4
上白糖 99.2
黒砂糖 89.7
出所: 上白糖と黒砂糖は文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告「日本食品標準成分表 2010」より。それ以外は一般社団法人食・楽・健康協会公式サイトより、
ごはんは(大盛りでない)茶碗1杯だと、150g程度になります。つまり、茶碗1杯の白米ごはんの糖質量は55g程度になりますので、1食当たり20~40gを既に上回っているわけです。したがって、ロカボ食生活という観点からは、ごはんは茶碗山盛り1杯は多すぎで、7割以下にしたほうが良さそうです。
食パンの場合は、1斤が平均400g程度ですので、6枚切り1枚だと約67gで、糖質は30g程度です。ロカボ食生活という観点からは、1回に食べるのは1枚にとどめておくほうが良さそうです。
なお、砂糖が糖質そのものなのは当然のことですが、私は個人的には、低カロリー・低糖質を掲げた人工甘味料は好きではありません。添加物も含め、化学合成されたものだと、どういう成分がどう健康に影響するか分からない、と思えるからです。